テレビドラマ「白い巨塔」が話題になりました。山崎豊子さんの名作ですが、発表された当時と時代も変わってきました。主人公の財前五郎ががん手術の名医でありながら、自らもがんで倒れるというのは皮肉なものですが、原作では胃がんだったものが今回のドラマ版ではすい臓がんになっています。医学の進歩が反映されていると言えるでしょう。
がんは死の病であった。すい臓がんなどは今でも早期発見が難しく、そのイメージが残りますが、胃がんなどはピロリ菌が主因とされ、胃カメラなどでの早期発見早期治療が可能となりました。抗がん剤も進歩して副作用も少なくなってきました。検診をきちんと受けて早期に発見されれば、かなりのところ治る病気となってきたのです。がん治療の拠点病院も増えました。
人類は病気を克服しつつあるのでしょうか。実際の様相は異なっています。クルマ社会、ネット社会など歩かない生活、過食、カロリ―過多など健康に良くない生活習慣が広がっています。都会で電車通勤をしている人はそうでもないようですが、地方では100m先の近所のお宅に行くのもクルマです。運動不足は明らか。塩分の採り過ぎも問題です。生活習慣病、糖尿病や高血圧の問題が大きくなっています。保健師さんらはそう言います。
例えば糖尿病はどんな病気でしょうか。自覚症状は少なく、治療にしても、食事や運動療法、薬の服用などは面倒くさい限りで、治療中断の方も多々います。一方で重症化すれば透析が必要に至ったり、場合によっては失明や足の切断もあり得るのです。糖尿病の重症化予防は、今や医療政策の重点課題となっています。
生活習慣を変えることは難しいことです。美味しいものを我慢したり、運動しなければいけなかったり、痛いことも痒いこともないから今はもっと楽しく生きたいと思ってしまいます。一気に進んだこともあります。煙草については、禁煙促進が進みました。喫茶店や居酒屋でも禁煙の店が珍しくなくなりました。「ヘビースモーカーだが長生きしている人もいる」などという異見も聞かれなくなりました。煙草は肺がんのみならず循環器系他の多くの病気に関係しています。糖尿病も高血圧も煙草の問題と同じくらい深刻な問題なのです。もはやがん対策だけが課題ではありません。昨年12月に脳卒中・循環器病対策基本法が成立しました。実は怖い生活習慣病のことをしっかりと考えたいと思います。